Aさん(61歳、男性)は、水分が飲み込めないため
入院した。高度の狭窄を伴う進行
食道癌と診断され、
中心静脈栄養が開始された。
入院後1週、Aさんは口渇と全身倦怠感を訴えた。意識は清明であり、
バイタルサインは
脈拍108/分、
血圧98/70mmHgであった。尿量は1,600mL/日で、
血液検査データは、
アルブミン3.5g/dL、
AST45IU/L、
ALT40IU/L、
クレアチニン1.1mg/dL、血糖190mg/dL、Hb11.0g/dLであった。Aさんの口渇と全身倦怠感の要因として最も考えられるのはどれか。
1→
WHOの
貧血の定義に、男性はHb13.0g/dL以下とあり、Aさんは
貧血と判断されるが、口渇の要因とは考えにくい。
2→
アルブミンの基準値は4~5g/dlであり、Aさんは
低栄養状態と判断されるが、口渇の原因としては考えにくい。
3→
血糖値190mg/dLであり、全身倦怠感と口渇から高血糖が予想される。
高血糖になると尿中に糖が増加し、腎臓の
尿細管内の
浸透圧が上昇し、
尿細管での水の
再吸収が行われなくなることで
多尿になる。そのため、口渇がみられる。また、
インスリン不足により糖代謝が悪化することで、全身倦怠感が起こる。
4→腎機能を示す
クレアチニンの基準値は0.6~1.2mg/dlで、Aさんは正常範囲内であるため、腎機能障害があるとは考えにくい。
5→
肝機能を示す
ASTの基準値は10~33IU/L、
ALTの基準値は5~42IU/Lである。軽度上昇しているが、全身倦怠感をもたらすような
肝機能障害が生じているとは考えにくい。