次の文を読み〔問題112〕、〔問題113〕、〔問題114〕の問いに答えよ。
Aさん(42歳、男性)は、全身倦怠感を訴え病院を受診したところ、
肝機能障害が認められ内科に
入院した。Aさんは大量飲酒を長期間続けており、アルコール
依存症が疑われた。内科医からの依頼で精神科医が診察をしたときは、Aさんは意識清明で
見当識障害はなかった。妻とは不仲であり、半年前に仕事で大きなトラブルがあったため、朝から飲酒するようになり飲酒量はさらに増えていた。
〔問題112〕
Aさんに認められるのはどれか。
1→病的酩酊とは、
幻覚が生じたり
見当識が失われて、周囲の状況への認知はほとんど不可能になった状態である。周囲から見ると了解不可能な言動を繰り返し、
幻覚・
妄想や状況の根本的な誤認から重大な犯罪に及ぶこともある。
Aさんは、意識清明で
見当識障害もなく、病的酩酊とはいえない。
2→共依存とは、自分と特定の相手がその関係性に過剰に依存しており、その人間関係に囚われている関係への嗜癖状態を指す。共依存者は、相手から依存されることに無意識のうちに自己の存在価値を見出し、そして相手をコントロールし自分の望む行動を取らせることで、自身の心の平穏を保とうとする。
Aさんは妻とは不仲であり、共依存しているとは考えにくい。
3→
コルサコフ症候群とは、記憶障害を主症状とし、不可逆的な神経障害を伴う
認知症のひとつである。アルコール
依存症でみられることがある
コルサコフ症候群では、健忘、記銘力障害、
見当識障害、作話を伴う。
4→耐性とは同じ量の飲酒でもあまり効かなくなってくることである。いわゆる「酒に強くなってきた」状態で、少量の飲酒ではあまり効果がなくなり、同じ効果を求めて徐々に酒量が増加していく。
Aさんも朝から飲酒するようになり飲酒量はさらに増えていたということで、アルコールに対する耐性が形成されていると考えられる。