Aさん(50歳、男性)は、上腹部痛が突然出現したため、冷や汗をかき腹部を押さえながら家族と来院した。Aさんは
十二指腸潰瘍の既往がある。このときに観察する徴候として最も適切なのはどれか。
1→Romberg(ロンベルグ)徴候とは、
脊髄後索障害の有無を評価する際に用いる。両足のつま先をそろえて起立した状態で、開眼時と閉眼時の身体の動揺を比較する検査である。閉眼時に大きく身体が動揺する(ふらつく)場合は陽性で、失調症状が感覚性であることを示し、
小脳の障害が除外される。
この症例では、関連性の低い検査である。
2→ブルンベルグ徴候は、腹膜炎でみられ、腹壁を静かに圧迫してから急に圧迫を解くと強い痛みを感じ反跳痛ともいわれている。
原因は腹膜の
炎症によるもので、消化器の
炎症性疾患が疑われる。この症例では、突然の上腹部痛に対し、冷や汗をかいて腹部を押さえている様子から、
十二指腸潰瘍が穿孔して腹膜炎になった可能性を考え、最優先で観察する必要がある検査である。
3→クールボアジェ徴候は、胆嚢より下流の胆管閉鎖により胆嚢内に
胆汁が蓄積し、無痛性の胆嚢腫大が起こる現象をいう。膵頭部癌や胆管癌で観察される。
この症例の場合は、痛みがあることから観察する徴候としては適切ではない。
4→トレンデレンブルグ徴候は、中殿筋の麻痺によって歩行時の足を上げた側の骨盤が下に沈む現象をいう。通常の歩行では右足を上げれば骨盤の右側も同時に上がっている状態である。
この症例では、観察する徴候としては適切ではない。